みたもの備忘録

ジャンルを行き来するオタクの妄言。たまにまじめなこと

あやめ十八番「しだれ咲き サマーストーム」

  一年前から待っていたあやめ十八番の本公演、これに合わせて夏季休暇を取得した社会人の感想エントリ。

  ちなみに観たのは7/22  マチネ・アフターライブ、7/23 マチネ・アフタートーク

 

全体的な感想

 

  話の筋としては単純なのだけれども、これぐらいの方がDVDで繰り返し見られて、公演がない時期に劇団の雰囲気を味わうにはよい……前作前々作みたいな話だと心にぶっすり刺さる代わりに情緒不安定になって二度と見られないので……(精神的に弱い人間)。

  下げの一言で否応無く幕は下がって物語は終わるので、誰がその後どうなったとかは一切分からないけれども、その方が「物語を観ている」感があって私には良いのかもしれない。

 

ちなみに22日は最前列だったので冒頭の飴屋さんに飴(レモン味)をもらった。やったね。

 

  少し残念なのは、笑わせるための間とかタメの取り方が好みじゃないところが何箇所かあって、「落語っぽいテンポ感」とは何だったのか……?という気持ちになった。これは完全に好みの問題だけれども。

 

 

よかった役者さん

 

  ふっきーさんこと藤原さん、昨年の「変わり咲きジュリアン」で初めて拝見して今回が二回めだけれど、とても好みだった。

  特に二幕後半、祝言にお袖さんたちが殴り込んできた時に、その姿を見て笑いながら俯く→顔を上げる仕草、表情が素晴らしかった。一番好きな場面。

  私の好きなお芝居をされる役者さんは声優もやってらっしゃることが多く、声のトーンだとかブレスだとかのコントロールで演技をしているのが好みなのかもしれない。

 

  村上さん、硬派な男が似合う。この人もなんて芝居が上手いんだ……。アフタートークで「牡蠣右衛門の声を出す身体が先にできて、感情は後から付いてきた」と仰っていたけれども、確かに台詞が上滑りしていない感がある。

(身体が先に出来て〜という話、つまるところ芸術における「型」の重要性だよな、と後から思う。私はまず美しい型があってからの個性、表現がある、というスタンスなので)

 

  堀越さんの白菊は、芸事をやっている人間ならではの色気がすさまじい。個人的に牡蠣右衛門が落語家っぽく感じなかったのは、この色気よりも堅物な感じが強かったからかもしれない。

  

  和知さんはヒモとかクズ男がよく似合う……よくよく考えなくても心中で日和って自分だけ逃げたり女に金を出させたり、やっていることはクズの極みだけれども、作風のせいなのか、なんとなく「しょうもない野郎だな」で済ませてしまいそうになる憎めなさ。許せないクズだけど。

 

  のよちゃん役シミズアスナさん、目隠し鬼のシーンでのピルエット(で合ってる?)がとても綺麗だと思ったら、パンフの経歴のところにバレエをやっていたと書いてあって納得。常にちゃんと人形っぽく動いていて、薄蜘蛛の融羽子さんの着物の所作もそうだけれど、自分の身体をきちんと隅までコントロール出来ている人の動きは美しい。

 

  大森さん、お袖みたいな役が似合うな〜。何となく肝っ玉かあちゃんのイメージを勝手に抱いているので、ハマり役だなぁとニコニコしながら観ていた。大森さんの声で聞く啖呵が気持ち良い。

 

  金子さん演じる朝蛾於、お凛のときの無邪気さと廓に入ってからの気だるげな感じ、どちらも素敵。なんかこう書くとゲイシャパラソルの仇吉みたいだ、堀越さんの好みなのかな……。

 

  山下さん、カタギじゃない仕事をしている人間の説得力がものすごくあるし、扇子さばきも美しいし、さすが……。朝蛾於の回想での有ま屋二人組がコメディ感マシマシで好き。

 

その他

 

  今回も音楽が変態的にすごくて(褒めている)、これまであやめでやってきた楽曲で単独のライブとかやったらどうかな……という気持ちになってきた。需要は絶対にあるはず(まあ過去作品だとJASRAC的なハードルがあるかもしれない……)。

  というか楽隊(芝居しないとは言ってない)が相変わらずで笑ってしまう。冒頭の納豆売りこと島田さん、さすがの通る声。アフターライブのときもマイク必要無いんじゃ……?と思いながら聴いていた。

 

  今までアフターイベントがチケット買った後に決まるものだから毎回休みが取れなくて見られず終いだったのだけれど、やっとアフターライブ&トークに参加できた……。これからはチケット発売前のアナウンスをお願いします。是非(私の記憶にないだけで以前から事前アナウンスあったらごめんなさい)。

 

  とにかく一年ぶりのあやめ十八番、とても楽しく観ることができた。来年の公演も待ってます!