みたもの備忘録

ジャンルを行き来するオタクの妄言。たまにまじめなこと

あやめ十八番「江戸系 宵蛍」

 皆さんご存知、年一回しか公演をしないお団子屋さんの作る舞台、このような状況ながら無事初日を迎えることが出来て本当によかった。仕事の都合をつけてもらい初日も千穐楽も行けることに。有難い〜!

 

 

 

 あらすじ(公式から引用)

 

令和2年。56年ぶりに開催された東京オリンピックに日本中が熱狂していた。
国内最大の国際拠点である第二東京国際空港もまた、例年以上の賑わいをみせている。
そんな中、華やかなアスリートたちの活躍の影で、ひっそりと海外メディアの注目を集めた家族が居た。

『千年(ちとせ)』の表札がかかったその家は、第二東京国際空港・滑走路の延長線上にある。
この一軒の家の為に、第二東京国際空港は未完成のままでの運用を余儀なくされていた。

千年は、ありふれた家だった。
かつてこの家に燈っていた闘争の火は、今ではもう見る影もない。
消え入りそうな小さな火種が、燻ったまま、あるだけだ。

空港の中の一軒家と、そこに纏わる人々のお話。

 

 

 前作が開国の遅れた日本、更にその前作が平成60年の東京、とパラレルワールド感のある舞台が続いていたが、今回の江戸系 宵蛍も期せずして?もしもの話になってしまった。私達が経験できなかった、2020年にオリンピックの開催される日本の話。

 休憩を挟んで一幕が2020年、二幕が1966年。ひとつの家族、ひとつの家を中心にして話が進んでいく。

 

 

 

 

 音楽はもちろん効果音含めてすべて生演奏、ちなみに一幕の音楽隊のみなさんが航空自衛隊の音楽隊のような衣装なのに2回目で気づいた。そういう細かいところが良いポイントを上げてくる……!!ユーフォニアムの柔らかく深い音色が物語に寄り添っていてとても素敵だった。

 

 以下は特によかったり気になった点についてのぶつ切りの感想。

 

 谷戸さん演じる天草、あのなんとも食えない、人をだまくらかすような飄々とした雰囲気の中に時折見せる冷たい目線、ひょろりとした手足の動き、よい!好き!!今回、私はこういう食えない役(とそれが似合う役者さん)が好きなのだな……と改めて思った。わかりやす〜い。

 それとこれはまた衣装の話になってしまうのだけれど、1966年の方でスーツがきちんと古い型・デザインのものになっているのにちょっと感動したりした。昭和っぽい、おじさんっぽいというのか、あの生地!あのデザイン!!

 

 実は同い年なのでチケットとかでひっそりこっそり応援している武市くん、美味しい役だった。最初のシーンでちょっと賑やかしみたいな感じのキャラなのかな?と思っていたら最初に千年家へ行った時の横柄な足組みと応答にキュン……としてしまった。でも結局真面目だから最終的に千年さんのマネージャーみたいになっちゃうんだね。可愛い、よいキャラクターだ。

 

 2020年時点の千年家の長男である忍、自分の家が他の家と明らかに何か違うことに関する引け目と、それでも家族なので出て行くこと、置いていくことができない気持ちが、最初の取材後の会話とか家族会議とかからとても感じられた。パンフレットの堀越さんインタビューにも書いてあったけれど、実のきょうだいと昔から彼らを知っているお二人が家族だからこそ、家族にしか見せられないむしゃくしゃした気持ちとかわがままにも見えるやり場のない感情が伝わってきたのかも。エンタメであるお芝居の中にリアルが感じられてとても良かった。

 

 一点だけ、粟国のキャラクター・言動だけどうしてもしっくり来ないというか私の中で上滑りしてしまった感がある……(役者さんの演技というより脚本時点での造形の話)「田舎に嫁いできた東京出身の元バリキャリ」のステレオタイプがあまりに前面に押し出されているような。

 もちろん粟国はこの話の推進力である「よそもん」の視点を持つ人物なので必要なのだけれど、田舎の保守性をぶち壊すこと(?ちょい違うけどうまく言葉にできない)に熱心すぎてちょっと田舎に対して無神経すぎるように思う。まあそれくらいパワフルじゃないとあんな強引にできないのは分かる……分かるけど……。

 

 次回は池袋なので行きやすくて嬉しい。今度のテーマが何になるのか楽しみに来年を待ちたいと思う。